子どもたちの夏休みも、あっという間に1週間が過ぎました。
「ただいま～！」
学校のプールからハナが帰ってきました。リビングでは、弟のソラがブロックあそびをしています。台所で昼食をつくっているお母さんが「おかえり」と返事するよりはやく、ハナは水着やバスタオルの入ったビニール袋をソファの上に放り投げ、冷蔵庫へ。よっぽどのどが乾いていたのでしょう。お母さんの手づくりのレモネードをコップに注ぎ、一気に飲み干しました。
「先に手を洗いなさい、ハナ」
お母さんはカウンターテーブルの向こうからハナに注意しましたが、ハナはソファの横に置かれた大きなダンボール箱に気を取られて聞こえなかったようです。ダンボール箱の表面にはアルファベットで何か書かれていますが、ハナには読めません。どうやら、海外から届いた荷物みたいなのですが……。
「ねぇ、お母さん。これ、なに？ お父さんから？」
ハナは、サンフランシスコに出張中のお父さんが送ってきた荷物だと思いました。弟のソラもそばに寄って来て、ダンボール箱をペタペタと触っています。「ハナ宛ての荷物だけど、差出人はミナ・トロットさんね。ミナはお父さんの会社をつくった方よ。ハナが帰ってきたから、ちょっと空けてみよっか」
タン、トン、タン、トン、タン、トン。
翌朝、ハナは太鼓をたたくような音で目が覚めました。寝返りをうち、二段ベッドの上からまだ薄暗い部屋を見下ろすと、何かが床をピョンピョンとジャンプしています。そうです、昨日はずっと眠ったままだったあの2匹のふしぎ動物が、追いかけっこをするように仲良く飛び跳ねていたのです。
「ねぇ、ソラ、起きてよ。ほら、昨日のあれが動いてるよ。ねぇ、ソラってば」
ハナは二段ベッドの下で寝ていた弟のソラをむりやり起こしました。ソラが目をこすりながベッドの手すりに手をかけると、2匹の小動物がジャンプしな がらソラに近づきました。おどろいたソラは、思わず「わっ！」と声を上げました。それを見た2匹は、ソラと同じぐらいびっくりした様子でブルブルとしっぽ をふるわせています。
「恐くないよ、こっちにおいで」
ハナが手を差し出すと、2匹はおそるおそる小さく飛び跳ねながら近づいてきました。「よしよし」と、ハナが大きいほうの頭をなでえると、ソラもハナのまねをして小さいほうの頭をなでました。
「おねえちゃん。この子、なんだかプルプルしてるねー」
「そうね。杏仁豆腐みたいだね」
今日は久しぶりに、家族4人で一家団らん。ハナとソラは、お父さんとたくさんのお話しをしました。
もちろん、そばにはトフがいます。トフはさっきから耳としっぽをゆっくりゆらしながら、ニコニコしています。
「ねぇ、お父さん。わたしにトフをプレゼントしてくれたミナってどんな人なの？ 」
ハナは、お父さんの仕事のこと、ミナのこと、会社のことに興味をもったようです。ハナのとなりでは、ソラがトフとじゃれあっています。
「ミナは、パパの会社の創業者なんだよ。パパの会社は、『TypePad（タイプパッド）』っていう、誰でも簡単に自分のブログ（※ホームページの1つの種類。日記として個人で書いている人も多い）をもてるソフトをつくったんだ。ミナも自分のブログをもっているんだよ。ちょっと見てみるかい？」
そういって、お父さんはノートパソコンの画面を開き、ミナのブログをハナに見せてくれました。
▼Not a dollarshort.org（ミナのブログ）
ミナのブログは、とてもシンプルだけどとてもオシャレなふんいきです。もちろん英語だらけなのでハナには何がかいているかさっぱりわかりませんが、お 父さんがブログに書かれていることをハナに1つ1つ教えてくれました。ブログのなかには、ミナが夫のベンと一緒に並んだ写真もありました。とても 仲の良さそうな夫婦です。
ハナは、昨日お父さんに教えてもらったことを思い出しながら、TypePadではじめてブログを書いてみることにしました。お父さんはTypePadをはじめるハナに、むかし使っていたノートパソコンとデジタルカメラを貸してくれたのです。
ハナはブログに何を書くのか、実はもうすでに考えていました。それは……もちろん、トフのことです。10歳の誕生日にトフが家族の一員になったからこそ、いまこうしてTypePadを始めることになったのですから。
さっそくハナは、両手でゆっくりとキーボードを打ち始めました。何行か書いたところでトフの写真も入れたいと思い、デジカメをもってソラとトフが遊んでいる様子を撮ろうと思いつきました。
もう8月です。夏休みも4分の1が終わってしまいました。
ハナは学校のプールに行ったり友だちと遊んだり、毎日楽しく過ごしています。家に帰ってきてからのお楽しみは……もちろんトフと遊ぶこと。あと、ハナはお父さんに教えてもらったブログのことをもっと勉強したいと思ってるようです。
夕食を食べ終わったあと、ハナは自分のブログをのぞいてみました。すると、初めて書いたエントリーに、ぜんぜん知らない人からコメントが書き込まれているのを見つけました。
こんにちは。はじめまして。私はクロと言います。
小学4年生でウェブブログをはじめるなんてすごいですね。
トフ、とてもカワイイですね。トフはどんな食べものが好きなんですか？
投稿 クロ | 2005年8月1日 午後12時32分
ハナはとてもビックリして、お父さんとお母さんにパソコンの画面を見せました。お姉ちゃんのはしゃぎぶりをみて、トフと弟のソラも近くに寄ってきました。声を出してコメントを読み上げたハナに、お父さんはこうアドバイスしてくれました。
「ブログは、コメントやトラックバックでいろんな人とコミュニケーションができるんだ。ハナもコメントで返事を書いてみたら？」
さっそくハナは、クロと名のるこの人にコメントのお返しをしてみました。
クロさん、はじめまして。トフは何でも食べるのですが、特にくだものが好きみたいです。みんなでスイカを食べたとき、トフはスイカのたねや皮まで食べちゃったんです。
投稿 ハナ | 2005年8月1日 午後 12時44分
ハナは、「クロさんはこのコメントをちゃんと読んでくれるのかなぁ」と、ちょっと心配しました。
初めてブログを書いたら、クロさんという人から初めてコメントをもらいました。トフの好きな食べ物について質問されたので、コメントのところでスイカですと返事を書いてみました。
お父さんに聞いたのですが、ハナのブログはインターネットでいろんな人が見ているかもしれないのだそうです。いろんな人とお話しできるかもしれないのはすごいなぁ～と思いました。
2005-08-1 | permalink | コメント（0） | posted by ハナ
今日はハナとソラにとってちょっと悲しいできごとがありました。お父さんが仕事の都合で、またしばらく海外出張に行くことになってしまったのです。
「パパ、次はいつ帰ってくるの？」
ソラはお父さんに聞きました。トフはソラのそばに座りながら、ちょっと悲しそうな顔をしています。お父さんはソラをだっこしながら答えました。
「そうだなぁ……だいたい3週間ぐらいで帰ってくるよ。そのあとは、お父さんも夏休みが取れるから、家族みんなでどこかに遊びに行こうか。ハナは ちゃんと夏休みの宿題もやるんだぞ。あと、せっかくブログを始めたんだから、毎日書くようがんばってみなさい。デジカメで撮った写真をつけたら、ペー ジがにぎやかになって楽しいよ」
今日はお昼ごはんをみんなで食べたあと、ソラとハナとお母さんとトフで、駅までお父さんを見送りにいきました。せっかくの夏休みなのにお父さんがいないのはさびしいけれど、帰ってきたらどこかに遊びに連れて行ってくれるそうです。楽しみだなぁ。
あと、お父さんに毎日がんばってブログを書いてみるように言われたので、その日のできごとなどをこれから毎日書いてみようと思います。でも、毎日なんて書けるかなぁ。。。ほかにも小学生でブログを書いている子、いるのかな？？？
ハナは、毎日ちょっとずつその日のできごとをブログに書くことにしました。ただ、毎日書けるかどうかちょっと心配そう……。そのことを日記で書いてみたところ、以前コメントを残してくれたクロが、さっそくアドバイスをしてくれました。
●8/2 「ハナの日記」 コメント欄
こんにちは。小学生でブログを書いている子、最近ちょっとずつ増えてきているみたいですね。
雑誌などでも紹介されていましたが、「ひらがなぶろぐ」の小学3年生のななちゃんは、なんと1年生からブログを書いているそうです。▼ひらがなぶろぐ
http://www.aivy.co.jp/BLOG_TEST/nana/「ひらがなぶろぐ」を読んだ感想を自分のブログに書いて、トラックバックしてみる、なんてこともできますよ。
投稿 クロ | 2005年8月3日 午後03時50分
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クロさん、こんにちは。
ひらがなぶろぐ読んでみました。ななちゃんって毎日書いているんですね。すごーい！ ところで、、、トラックバックってなんですか？
投稿 ハナ | 2005年8月3日 午後4時15分
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こんにちは。
ト ラックバックというのは、「あなたの書いたことを読んで、私はこんなことを書いてみましたよ」と相手に伝える機能です。ブログの1つの記事にトラック バックをうつと、そのページに自分のブログへのリンクが表示されるので、そのブログの持ち主はもちろん、いろんな人に自分のブログを見てもら える機会が広がります。やりかたは、「3.トラックバックをうってみよう！」をしっかり読んでみてくださいね。
投稿 クロ | 2005年8月3日 午後4時22分
毎日暑い日が続きます。ふだんは元気いっぱいのハナとソラですが、さすがにちょっとバテ気味のようすです。トフといっしょに外を散歩するときは、夕方の少し涼しくなった時間に出かけることにしました。
「ただいまー」
ハナとソラとトフが家に帰ってくると、お母さんはリビングでトランクを広げていました。そのなかには、ハナやソラの着がえやサンダル、歯ブラシやドライヤーなどが詰め込まれています。
「あれ？ どっか行くの？」
ソラがそうたずねると、お母さんはこう答えました。
「今度の週末ね、急にママのお仕事が入っちゃったの。だから、ハナとソラは鎌倉のおばあちゃんの家にお泊りしてくれる？ もちろん、トフもいっしょにね」
これを聞いたハナとソラは大よろこび。おじいちゃん、おばあちゃんに会えるのも、鎌倉の家に泊まるのも楽しみでしょうがありません。しかも、今回はトフもいっしょです。大さわぎしているふたりの横で、トフはふしぎそうな顔をしていました。
さあ、今日は鎌倉のおばあちゃんの家に出かける日です。ハナはお母さんとソラ、そしてトフと一緒に電車に乗ることになりました。ソラは電車が大好き。シートによじ登ってはしゃいでいると、おかあさんにちゃんと靴を脱ぎなさい、とおこられてしまいました。
トフは電車に乗るのは今日が初めて。最初はちょっと緊張していたようですが、ソラがトフをだっこして窓の外を見せてあげると、しっぽをふりながら喜んでいました。
鎌倉駅に着くと、ハナたちはそのまま江ノ電に乗り換えました。この電車はとてものんびりと、ゆっくりと進みます。車内には、鎌倉に住んでいる地元の ひとたちだけではなく、鎌倉を観光している外国人の人たちや、ゆかたを着たお姉さんたちのすがたもありました。今日はどこかで花火大会でもあるのでしょう か。
ハナたちがおばあちゃんの家にやってきて、今日が3日目です。お母さんは鎌倉に着いた次の日、バタバタとあわただしく仕事に出かけてしまいました。 ソラはいつもお母さんがいなくなるとさびしがるのですが、今回はトフがそばにいてくれるからでしょうか。元気よく「いってらっしゃ～い！」とお母さんをお 見送りしていました。
おじいちゃんとおばあちゃんは、いままで見たことのないような生き物（トフのことです）を見て、最初はとてもおどろいたようでした。でも、トフがスイカを皮までぺろりと食べるようすや、よろこんでしっぽをふるしぐさなどを見て、トフのことをとてもかわいがってくれました。
ハナは、ソラとトフと一緒に、おばあちゃんの家の近所を散歩してみました。あたり一面には夏のにおいがただよっていて、細い路地があちこちにのびています。
